青葉哲郎のマーケティングブログ

ムーミンパーク日本初上陸!日本のテーマパーク市場について

はじめまして。サイコスでマーケティングコンサルタントをしております青葉哲郎でございます。このたび、サイコスのホームページリニューアルに伴い、『青葉哲郎のマーケティングブログ』を始めることにしました。私が日々キャッチすること、面白いと思うことを、皆様に発信していければと思っています。少しでもお役に立てれば幸いです。

さて、第一回目はテーマパークについて。というのも私自身、学生時代に東京ディズニーランドでジャングルクルーズの船長をしていまして、テーマパーク事情は気になるところなのです。そこで今回は、ムーミンパーク日本初上陸から、日本のテーマパークについて考えていきたいと思います。

◆ムーミンパーク日本初上陸!◆

女性や子どもに大人気のムーミン。そのムーミンを主題とした施設が、2017年、埼玉県飯能市に誕生します。宮沢湖の湖畔や周辺の森林を活用して、ムーミン谷の世界観を再現。作者であるトーベ・ヤンソンの故郷、フィンランドのムーミンワールド以外では、日本が世界で初めてです。本家のムーミンワールドは、東京ディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパンのようなテーマパークとはひと味違い、どちらかといえばゆったりとした公園のような感じ。自然に囲まれていて、心から癒される雰囲気になっています。のんびりランチをしたり、園内の郵便局からポストカードを送ることができたり、グッズショップがあったりと、十分に一日を過ごすことができます。入園料は大人€27。

◆ムーミンの歴史◆

それではここで、少しだけムーミンの歴史を。ムーミンの作者トーベ・ヤンソンは、1914年、フィンランドのヘルシンキに生まれます。初作は小説『小さなトロールと大きな洪水』。ムーミン母子が、失踪したムーミンパパを探す旅の物語です。その後、小説→絵本→コミックと出版していき、1959年には、ドイツでパペットアニメーション『Moomins on Stage』がテレビシリーズとして初放映されます。日本でも、1969年にテレビ放送が開始され、日本中でムーミンが大人気になりました。

◆日本での普及◆

ムーミンは、日本でどのように普及していったのでしょうか。1969年のテレビアニメ放送以降、ムーミンの人気は広がり、1990年代には全世界の売り上げの50%を日本が占めていました。ですが、2000年代に突入してから、このテレビアニメの著作権に頼りきったビジネスモデルを、一切やめるという決断をします。リーマンショック後の経済不況や、ディズニーやサンリオの隆盛の中で、アニメの乱発ではなく、ムーミンのアート性をコアにした戦略に転じていくのです。これは、予想以上の成果を挙げますが、紆余曲折もありました。2008年頃までは日本を中心に売り上げの微減が続き、日本の売り上げの割合も30%以下に。ですが結果的に、昨年までの10年間で、売上高が6倍に伸びるまでになりました。世の中に「カワイイ」ものが溢れている中で、ムーミンも「カワイイ」のひとつでいるだけではダメだと考え、中流階級のインテリ層にも理解してもらいたいと方向転換したことが、功を奏しました。現在は、トーベ・ヤンソンが書いていた原作に近い形になっていて、昔のムーミンのアニメを使用することは禁止になっています。

さて、日本におけるムーミンパークは、埼玉県飯能市に誕生します。宮沢湖の湖畔や周辺の森林を活用して、ムーミン谷の世界観を再現されるのですが、どうやら、無料の「Public zone(パブリックゾーン)」と、有料の「Moomin zone(ムーミンゾーン)」のふたつのエリアで展開されるようです。パブリックゾーンは、誰もが日常的に行ける公園としての機能を持つとともに、自然を活用したアクティビティなどを展開。ムーミンゾーンでは、ムーミンの物語の世界を楽しめる施設やショップ、レストランを展開するようです。様々な人を取り込む狙いですね。ですが、懸念点は交通の便でしょうか。西武線の飯能駅から3kmの位置にあり、駅からパークまではシャトルバスなどの運行が必須。また、池袋からレッドアロー号を利用して40分、在来線で1時間程度なので、リフレッシュのための小旅行としては近いと言えますし、東京駅から近く駅前のディズニーランドのように便が良いとはちょっと言い難いかもしれません。どう呼び込むかが腕の見せ所ですね。

◆日本におけるテーマパーク市場は、6,000億円◆

ここで、日本における遊園地・テーマパークの市場をご紹介します。経済産業省が発表した統計によると、2014年の市場規模は13年比6.2%増の6,061億円となっていて、2000年の調査開始以来、初めて6,000億円を超えました。リーマンショック後、拡大傾向にあります。東京ディズニーリゾートなど大型施設が人気を集めるほか、地方の中規模施設も入園者数を伸ばしていて、消費増税後の逆風下でも堅調に推移しているレジャー消費を裏付けています。この潮流は、ムーミンパークにとって、とても好都合でしょう。

注)「特定サービス産業動態統計調査」(経済産業省)の数値データをもとにサイコスにて作成

注)「特定サービス産業動態統計調査」(経済産業省)の数値データをもとにサイコスにて作成

◆年間3,000万人以上の集客を誇る東京ディズニーリゾート◆

それでは、人気テーマパークについて考えてみましょう。まずは、私も学生時代にキャストとしてジャングルクルーズ船長として働いていた東京ディズニーリゾート(以下TDR)をご紹介します。2014年度の東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの2パーク合計の入園者数は、過去最高の3,137万7千人で、前年度比7万9千人増となっています。TDRが過去最高入園者数を記録するのは、3年連続。2014年度のディズニーランドでは、新ナイトエンターテイメント「ワンス・アポン・ア・タイム」や新アトラクション「ジャングルクルーズ:ワイルドライフ・エクスペディション」の導入に加え、年間を通じて両パークで実施した季節感あふれる様々なスペシャルイベントが、ゲストから好評を得ました。

また、今年度の春のイベント「ディズニー・イースター」では、ディズニーホテルやディズニーリゾートライン、初開催となるディズニーシーなど、TDR全体でイベントを展開。ディズニーランドには、「スティッチ・エンカウンター」がアトラクションとして追加されましたし、ディズニーシーは、新しくショーに可動式ステージを導入するなど、日々進化しています。

 

さらに、TDRを運営する株式会社オリエンタルランドは、2017年以降の新構想を発表。ディズニーランドは、ファンタジーランドの面積を2倍に拡張し、新たに「美女と野獣」「ふしぎの国のアリス」の世界が誕生する予定です。また、ディズニーシーは、新テーマポートの開発を検討中で、その一部のエリアを「アナと雪の女王」の世界をテーマとし、テーマポートの全体テーマを「北欧」とする方向です。まだまだTDR人気の勢いは、衰えることがなさそうですね。

◆勢力増す、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン◆

東の横綱が TDRなら、西の横綱は映画のテーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下USJ)。USJでは、2014年度の入園者数が前年度比220万人増の1,270万人で、2001年の開業以来、13年ぶりに過去最高を更新しました。入園者数が大きく増加した最大の要因は、映画「ハリー・ポッター」をテーマにした新エリアとなっています。450億円を投じて2014年7月にオープンして以降、1年間のパーク全体の入園者数は約1,350万人にのぼります。27年度の入園者数は、「26年度を抜きたい」と過去最多の更新を目指すほど。

しかし、USJ人気はハリポタ効果だけが支えているのではなさそうです。大型アトラクション頼みだけでは飽きられてしまうという危機感から、脱「ハリウッド映画」を掲げ、「ユニバーサル・クールジャパン」を開催。「エヴァンゲリオン」や「進撃の巨人」「バイオハザード」「妖怪ウォッチ」など、日本の人気アニメのショーやイベントを強化したのが奏功しています。ですが、USJでは敷地を考慮した場合の年間入園者数の能力が、最大で1,500万人程度。USJを運営する株式会社ユー・エス・ジェイは、「大阪以外でも会社として大きく成長したい」と掲げ、構想が固まりつつあるのが、沖縄県本部町の国営海洋博公園内の自然をテーマにした新パークの建設です。こちらのパークのテーマを「南国リゾートでのリフレッシュ」と説明していて、「ユニバーサル」ブランドは使わない方針。どんなパークになるのか、楽しみですね。

◆安すぎる?TDRとUSJの入園料、日米比較◆

入園料を日米で比較してみましょう。日本では、消費増税やテーマパーク市場拡大の追い風もあり、入園料はTDRもUSJも上昇していますが、実は本場アメリカよりも、日本は入園料がお得になっています。言い換えると、日本の入園料については値上げの可能性はまだまだ続くことが予想され、1万円を超えるのも時間の問題でしょう。アトラクションなどの投資規模が異なりますが、ムーミンワールドの現地入園料は、€27。日本のムーミンパークは、どのように価格設定をしてくるのでしょうか。

日本 アメリカ
ディズニーランド 6,900円 フロリダ
$111(13,875円)
カリフォルニア
$99(12,375円)
ユニバーサル・スタジオ 7,200円 フロリダ
$102(12,750円)
ハリウッド
$95(11,875円)

注)$1=125円換算(2015年7月現在)

参考リンク:

 

◆まとめ◆

アベノミクスの景気回復効果も手伝って、今後、日本のテーマパーク市場はさらに成長する可能性が高いです。そうした良い環境の中、埼玉県にムーミンパークが誕生するということで、どのような成功をみせるのか期待しています。埼玉県飯能市という立地が吉と出るか凶と出るか心配はありますが、フライングタイガー、IKEA、マリメッコなどにみられるように、北欧のイメージは非常に良く話題性もあるので、良い流れに乗って成功するのではないかと思っています。首都圏ばかりにテーマパークが集中するのではなく、埼玉県や沖縄県など、全国津々浦々に個性的なテーマパークがあることで地域が活性化し、良いサイクルが生まれるかもしれません。今後、上海にもディズニーランドができる予定ですが、日本だけでなく海外でも、テーマパークがたくさんの笑顔を作り出す魅力的な場所であってほしいと願います。

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