青葉哲郎のマーケティングブログ

コーヒーが消える日?地球温暖化の影響と、新興国で急増するコーヒー消費

サイコスの青葉でございます。

いまや、国民的な飲み物になっているコーヒー。仕事や勉強の休憩時間には、コーヒーを飲んでリラックスする方も多いのではないでしょうか。

日本は先進国の中では、比較的コーヒーを安く飲める国です。スイスの金融大手UBSが調べた世界主要都市のコーヒー平均価格は、東京が3.47ドル。1位のコペンハーゲン(6.24ドル)の半額程度で、パリ(4.13ドル)やロンドン(3.88ドル)などと比べても安価です。

参考:UBS

しかしいま、コーヒーが危機に直面していることはあまり知られていません。コーヒーの国際的な研究機関「ワールド・コーヒー・リサーチ」は、コーヒー生産の6割程度を占める「アラビカ種」の生産に適した土地が、2050年には半減する危険性を指摘しています。さらに、新興国でのコーヒー需要の高まりも相まって、生産が追いつかなくなる可能性もあるでしょう。私たちにとって安価で身近なコーヒーが、そう遠くない未来には、高価で遠い存在になってしまうかもしれません。

そこで今回は、我々が愛してやまないコーヒーの、絶滅危機について迫ってみたいと思います。

◆コーヒーの歴史

まず、コーヒーの絶滅危機に迫る前に、コーヒーの歴史について少しご説明しましょう。

コーヒーの発見には数多くの伝説がありますが、二大伝説と言われるものがあります。それがキリスト教国の説である「ヤギ飼いカルディの話(エチオピア起源説)」とイスラム教国の説である「僧侶シェーク・オマールの話(アラビア起源説)」です。賛否はあるようですが、現在は「エチオピア起源説」が通例となっているようです。

その内容は、あるときヤギが何やら興奮して元気になっている様子を見つけたヤギ飼いの「カルディ」という少年が、原因を探っていくなかでコーヒーの木の実の存在に気がついたのだとか。その後、徐々にコーヒーの木の実の効能が伝わり、修道院では眠気覚ましなどに利用されるようになったといわれています。

参考:アフリカンテーブル

ところで、日本にはいつ頃伝わったのでしょう。日本に初めてコーヒーが伝えられたのは、江戸時代初期(1640年代)の長崎出島説が最有力です。鎖国中の日本で唯一、世界との交流が許されていた場所に駐在するオランダ商人によってもたらされたと言われています。ただ当時、コーヒーを口にできたのは、彼らと接触することができた役人・商人・通訳・遊女などの限られた人達でした。お茶の文化が根づいた日本では、独特の苦味や香りに馴染めない人も多く、当時は本格的に普及することはありませんでした。

◆温暖化がコーヒーに忍び寄る危機…種の60%が絶滅?

さて、我々の生活に欠かせないコーヒーですが、冒頭でご説明したように着実に危機が迫っており、その原因のひとつといわれているのが「地球温暖化」です。赤道を中心に北緯約25度から南緯約25度の間に位置する「コーヒーベルト」には、約60カ国にわたって多くのコーヒー農家が点在しています。

参考:AGF

コーヒー豆は、昼夜の寒暖が激しいほど味が良くなるため、標高500~2500メートルの高地で育てられているケースが多く見受けられますが、そんなコーヒーの木は非常に繊細で、気温は年平均20度ほどの過ごしやすさ、良好な日当たり、水はけの良さなどが生育に必要とされます。それだけに、地球温暖化の影響がじわじわと忍び寄ってきており、現にエチオピアでは、この50年で年間平均気温が1.3℃上昇しています。

「30年前は標高1800メートル程度だったのに、今は(暑さを避けて)2000メートルまでの高さまで生産地が移っている」と語るのは、グアテマラで30年以上コーヒーを手掛けるベテラン業者。もともと、高地での栽培は人件費などのコストが高くつきます。温暖化の影響を避けようと生産地の標高を高くすれば、さらなる価格上昇の圧力にもなり得ます。

参考:土居珈琲

こうした事態を見越して、各社では地球温暖化に対応した品種を育てようという動きが出てきています。「スターバックスコーヒー」は、中米のコスタリカに自社農園を購入するなど、世界各地で気候変動に強い品種の研究を進めています。また、国内大手「キーコーヒー」も、インドネシアにある自社農園で世界各地から集めた苗木を育て、気候変動に強い品種の見極めを行っています。

温暖化の影響は確実に迫ってきているので、各社、温暖化対策を早々に行う必要がありそうです。

◆新興国に広がるコーヒー消費。追い風となる中国「瑞幸咖啡(ラッキンコーヒー)」

しかし、コーヒー危機を招く要因は、温暖化による生産地の問題だけではなさそうです。急速に伸びる新興国の需要も、需給ひっ迫の要因になり得るでしょう。そして、その矛先として注目を集めるのが、中国の「瑞幸咖啡」(Luckin coffee)です。

参考:ラッキンコーヒー 公式HP

18年に北京で1号店を出店したばかりなのに、その数は既に3600店余り(2019年9月末時点)。最大手のスターバックス4000店余りを猛追する形になります。さらに、2020年1月には新しい経営戦略として、無人コーヒー製造機械である瑞即購(Luckin coffee EXPRESS)と、無人自動販売機である瑞劃算(Luckin pop MINI)の導入を発表しました。ユーザーがアプリなどからコーヒー注文を行えば、自動製造マシンが約90秒から100秒でコーヒー1杯を製造してくれるというもの。さらなるコーヒー消費量の追い風となることでしょう。

参考:中国咖啡市场搅局者 「中国のコーヒー市場予想」

また、中国だけでなく、生産国側だったブラジルやインドネシアでも、経済成長を背景にコーヒーの消費量が増えています。チェーン店などの外出先でコーヒーを楽しむのに加え、家庭内でも飲み始めることになると、より速いペースで需要が伸びることが予想されます。輸出国から消費国への移行が始まるなか、すぐさま在庫不足となる状況ではないものの、在庫減少が意識されるようになれば価格が不安定になることは間違いありません。

◆コーヒー豆の不足を見越したタリーズの「多角化」戦略

こうしたコーヒー豆の不足を見越して、国内の企業も対策に乗り出しています。例えば、タリーズコーヒージャパンの戦略は、豆の調達先を「多角化」すること。

タリーズの調達担当者は、「産地に行くと、“台湾のバイヤーが来たよ”とか、“中国のバイヤーがこういうの買っていったよ”とか、そういう話を耳にするので、私たちは私たちでいいものを探さなくてはいけないという気持ちになる」と言います。そこで昨年より、あまり聞き慣れない「ラオス」という生産国のコーヒー豆の発売を開始したのだそう。小規模な生産国にも調達先を広げることで、安定的に供給しようとの試みです。

参考:タリーズ公式HP 「ラオス エレファントルビー」 

「やはりコーヒー豆の需要はどんどん伸びていくと思う」と同者。「その中で、私たちもお客様にずっとおいしいコーヒーを提供し続けるために、今まで着目していなかったラオスのような産地にも目を向けて、いろんな産地に目を向ける一環の商品として紹介していきたい」と語ります。

◆まとめ

やがては訪れる世界的食糧危機。その幕開けがコーヒー危機であっても不思議ではありません。

コーヒーというと、大規模なプランテーションで作るイメージがありますが、実は世界の生産量の半分は、ごく小さな農家が一生懸命作っているという実態があります。そのため、農園運営が困難になり、投げ出してしまう農家も多いのだそう。彼らの生産意欲を維持させるのも、買付企業の役割になるでしょう。

今後、段階的に生産量が減っていけば、当然ながらコーヒー豆の価格高騰も予想されます。コンビニの100円コーヒーはおろか、サードウェーブに乗って急速に店舗数を増やした街のコーヒースタンドも値上げに踏み切らざるを得えないでしょう。コーヒーが、ほんの一部の富裕層だけが口にできる飲みものにならないことを願って止みません。

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